前回の記事で、社会保障分野について書いていて、ある騒動を思い出しました。
今日は、その話。
保育士の賃金が低いのは「誰でもできる仕事だから」問題
先に書いておくと、ホリエモンは、この発言の真意について以下にまとめています。
保育士をバカにして発言したわけではなかったわけですね。
そう、彼は単に
無知だっただけなのです。
とある保育士の反応
そして、この発言に対して、こんな反応をされている保育士の方がいました。
上記の記事の要点を私なりにまとめると、以下になります。
- ホリエモンのツイートを読む限り、ホリエモンの考え方は正しく、建設的である。
- 保育士は、資格なしで従事できてしまう。
- 本来は、専門性が必要だが、それが認知されていない。
- 実際に賃金を上げた「+αの技能を持った保育士」を知っている。
- 改善をしないから賃金が上がらない。
感情論を抜きにして、建設的な意見が書かれていると思います。
ただ、私はもうひとつ感想を持ちました。
「経済」を知らないって、こういうことなんだ。
と、思ってしまったのです。
「ミクロな視点」と「マクロな視点」の違い
実際に、上記の記事には、賃金を上げた保育士の話も書かれていました。
ただし!
「業界内で個人が賃金を上げていくこと」と
「業界全体の平均賃金を上げること」は、違うんですよ。
業界全体の平均賃金が上がっていない状態で、誰かが賃金を上げるということは、
誰かの所得を奪ってる、ということになります。
(良し悪しの話ではなく、そういう構図になるって話です。)
「保育士の賃金が上がらない」というのは、明らかに
平均賃金の話であり、マクロな話です。
しかし、上記の記事では「とある保育士」というミクロな話になってしまっています。
合成の誤謬(ごびゅう)
よく、ミクロな事例での対処法を、マクロな事例に当てはめようとする人がいますが、
経済においては、よくない結果を生み出すことが多々あります。
例)不景気のときの対処
- ミクロな視点:個人や企業は、支出を控えるべき
- マクロな視点:国家全体でそんなことしたら、余計に不景気になる
これを
合成の誤謬といいます。
「ミクロな視点の話」と「マクロな視点の話」は切り分けないといけないわけです。
ソフトウェアエンジニアは、なぜ賃金が高い?
私はソフトウェアエンジニア(SE)でしたが、
SE の平均賃金は、他の職種に比べて高いです。
厚生労働省の「
平成29年賃金構造基本統計調査」によると、
全職種の平均年収は
421.2万円でしたが、SEは
550.8万円でした。
SE の賃金がなぜ高いか?
答え:需要が高く、かつ人手不足だから
先に答えを書いてしまいましたが、これしか理由はないのです。
私は、転職で仕事が見つからなかったことはありませんし、
また人手が足りている開発現場を見たこともありません。
SEの誤解 その1:大変だから賃金が高い
これは、ホリエモンも、先の保育士の方も指摘されていますが、
「仕事が大変だから賃金が高い」ってことはありません。
私は SE の前にゲームプログラマをしていましたが、
大変なくせに、SE より低い給料でした。(もちろん高給な会社もあります)
また、ゲームプログラマより過酷と言われるアニメータ(知り合いが何人かいるのですが)は、
ゲームプログラマより給料が低いのです。
それでも、当時はゲーム業界やアニメ業界で働きたがる人は多く、
結構、競争は激しかったのです。
SEの誤解 その2:高度な知識が必要だから賃金が高い
一般の方が、最も誤解しているところではないかと思います。
もし、ホリエモンの主張通り
「保育士は、誰でもできる仕事だから賃金が低い」のであれば、
SE の賃金が高い理由が説明ができません。
SE に資格は要りません。誰でもなれます。
募集要項を探せば「未経験者歓迎」なんて会社はざらにあります。
もちろん、ソフトウェアの開発には、
「特定の知識・技能を持った人にしかできな作業」もあります。
しかし、
「誰にでもできる単純な作業」も多くあるのです。
私は、「プログラムを書いたことがない SE」によく会いましたし、
「アプリのインストールができない SE」にも会ったことがあります。(1人だけですが)
彼らも、ちゃっかり他の職種より高い賃金を貰っていたります。
SE の平均賃金は
「豊富な需要」と
「人手不足」によって上がってるのです。
保育士の賃金が上がらなかった理由
賃金は、人手不足であれば、基本的に上がっていきます。
「需要がたくさんある」ということは、俗っぽい言い方をすれば
「お金を払ってくれる人がいる」ということです。
逆に言えば!
賃金は、その「お金を払ってくれる人」次第というわけです。
保育の場合、その「お金を払ってくれる人」とは、
国や
自治体のことです。
保育は
社会保障分野なので、市場原理とは少し切り離されているわけです。
そして、保育に使われる予算を大きくしていかないと、
当然ながら「保育士の平均賃金」は上がっていきません。
結論:国が予算を付けていなかったから
個人の努力や、改善活動も大切ですが、それだけでは平均賃金は上がらないのです。
おまけ:改善活動と投資
最後に
「改善などの工夫をしていないから賃金が上がらない」という意見について、
開発現場で改善活動をしていた、元SE から助言。
改善活動をしても賃金は上がりません!
改善活動は、あくまで限られたリソース内で、作業品質を上げるために行うものです。
無駄が減り、仕事が楽になることはありますが、賃金が上がることはありません。
賃金を上げるためには
生産性を上げないといけません。
SE であれば、例えば「同じリソースで、より多くの機能をリリースできる」になります。
これには
投資が必要です。(参考:
開発における生産性の誤解)
つまり、よりコストを投入する必要があるわけです。
保育士の場合は、例えば
「より多くの子供の保育をできるようになる」となれば、
一人当たりの賃金が上がると思います。
ただし!
当たり前ですが、
一人の保育士に対する子供の数には、制限がかけられています。
無制限に人数を増やすことは出来ないのです。
やはり、国がちゃんと予算を付けるしかありません。
今日のまとめ
- 個人の賃金はミクロな話、平均賃金はマクロな話。区別する必要がある。
- 誰でもできる仕事だから賃金が低くなる、なんてことはない。
- 「豊富な需要」と「人手不足」があれば、基本的に平均賃金は上がる。
- 社会保障分野で平均賃金を上げるには、国が予算を付けないといけない。
SE みたいに、保育士も完全に市場原理に任せたら?(*'-')
社会保障分野って、消費者の方が立場上弱いので、
完全市場原理にすると、
アメリカの医療費のようになるでしょうね。
2015年 1人当たり医療費(個人・民間支出分、単位:ドル)
でも、これ以上予算って増やせないんじゃないの?(*'-')
国債発行でよいのです。
日本は財政破綻の心配はないし、
⇒
返済負担のない負債
国債発行に国民負担はないし、
⇒
国民経済を知ろう(国債の発行)
むしろ、社会保障費は日本経済を下支えするからです。
⇒
「社会保障費が日本経済を圧迫した」はウソだった
確かに、社会保障分野の平均賃金を上げるには国が予算を付ける必要がある!
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