前々回の記事で、
自治権について。
前回の記事で、大阪都構想の
建前上のメリットについて書きました。
・・・まぁ、そのメリットが現実的か否か、かなり怪しかったわけですが( -_-)
今回は、
デメリットは何だったのか?について書きます。
今回もあまり時間が取れないため、2015年に別サイトで書いた記事の焼き直しです。
緊縮財政
デフレの国の政府が、
緊縮財政(≒支出削減)を行うと、
デフレスパイラルが加速して、余計に経済を悪化させます。

(2018-04-03『
国民経済を知ろう(経済循環)』の記事より)
大阪市の税収
2015年当時、大阪市の税収は
6800億円程度でした。
これらは、すべて大阪市内で使われています。
大阪市が解体された場合、これらのうち
2200億円が大阪府の税収となり、
残りを特別区で分け合うことになります。
当時の協定書では、1100億円を元大阪市域に使われているかのチェック機構を作ることに
なっていましたが、仮にこのチェック機構が機能したとしても
16% の緊縮財政となります。
しかも、予算の按分は府議会で決めるため、すべて他の地域に回される可能性もあります。
前々回の記事で書いた通り、大阪市は
多数決で負けるため、その危険は高いのです。
すると、
最悪 32% の緊縮財政になる可能性があったわけです。
消費増税(8%)による打撃を受けていた当時、この危険を回避できたのはよかったのでは?
・・・というか、
今は
「消費増税(10%)+コロナ禍」という大打撃の最中なんだけど。
都市計画
大阪市の都市計画は、大阪市役所が担っていました。
つまり、大阪府庁には200万都市を計画する
ノウハウがない、ということです。
また、大阪市を解体・再編するため、その分だけ
都市計画は遅れます。
高速鉄道と都市人口
そもそも、「二重行政の有無が都市の発展に寄与した」
という事例を私は聞いたことがありません。
インフラの有無の方がよっぽど重要です。
以下の表は、明治と現在の都市人口の順位です。
明治と令和の都市人口の順位
|
1874年
(明治7年) |
2020年
(令和2年) |
|
東京 |
1 |
1 |
±0 |
大阪 |
2 |
3 |
↓1 |
京都 |
3 |
9 |
↓6 |
名古屋 |
4 |
4 |
±0 |
金沢 |
5 |
35 |
↓30 |
広島 |
6 |
11 |
↓5 |
横浜 |
7 |
2 |
↑5 |
和歌山 |
8 |
56 |
↓48 |
仙台 |
9 |
12 |
↓3 |
徳島 |
10 |
88 |
↓78 |
萩 |
11 |
526 |
↓515 |
首里(現・那覇市北東部) |
12 |
68 |
↓58 |
富山 |
13 |
43 |
↓30 |
熊本 |
14 |
18 |
↓4 |
神戸 |
15 |
7 |
↑8 |
福井 |
16 |
86 |
↓70 |
高知 |
17 |
65 |
↓48 |
堺 |
18 |
15 |
↑3 |
秋田 |
19 |
69 |
↓50 |
松江 |
20 |
109 |
↓89 |
新潟 |
21 |
16 |
↑5 |
弘前 |
22 |
131 |
↓109 |
高松 |
23 |
42 |
↓19 |
岡山 |
24 |
20 |
↑4 |
加世田(現・南さつま市) |
25 |
640 |
↓615 |
静岡 |
26 |
21 |
↑5 |
長崎 |
27 |
39 |
↓12 |
箱舘(現・函館市) |
28 |
85 |
↓57 |
高田(現・上越市南部) |
29 |
113 |
↓84 |
鹿児島 |
30 |
23 |
↑7 |
緑色に塗られているのは、
新幹線の駅がある都市です。
相関が強いことが分かります。
※九州新幹線と北陸新幹線は、開通して間もないため外してあります。
東京からは、新幹線が各方面に延びているのに対して、
大阪は未だに、「東京~福岡」間にある駅でしかありません。
大阪から四国地方や中国地方に行くのも、未だにひと苦労です。
北陸新幹線・リニア新幹線
2015年時点で、
金沢は東京と新幹線で繋がりました。
距離的には大阪の方が近いですが、時間的には東京の方が近くなりました。
そして、東京と
名古屋がリニア新幹線で 2027年に繋がることが発表されていました。
「大阪~名古屋」間を早く開通しなければ、
大阪にある企業は名古屋に移動していくでしょう。
2015年に大阪都構想が廃止されたことにより、
これら高速鉄道の誘致を早めることができるはず・・・だったんですが。
未だに、北陸新幹線は
2046年予定。リニア新幹線は
2045年予定。
都構想なんてやってる間に、大阪終わるぞ、ホントに。。。
防災対策
大阪市が廃止された後は、
人口と経済規模が等しくなるように
5つの特別区に分割される予定でした。
そして、この分割方法には大きな問題がありました。
防災費に対する偏りです。
津波
大阪市は2つの一級河川の中州に 200万都市があるという、世界的にも珍しい都市です。
しかし、そのため大阪市は 4m の津波で
難波駅より西が全て水没すると言われています。
要するに、大阪の地下鉄は
世界で一番水没リスクの高い地下鉄なわけです。
大阪市の再編をしていると、当然この防災対策も遅れます。
また、大阪市が一括して予算を管理できる今と違い、
湾岸側の特別区に多めに予算を割くことも難しくなります。
火災
老朽木造家屋が密集している
「危険な密集市街地」の面積で、
大阪は全国ワーストです。
これらの地域の対策はもちろんのこと、
断水対策もしなければなりません。
また、大阪府庁には
消防局がありません。
大阪市の再編&水道局の売却を行っていたら、
これらの対策は更に遅れることになっていたでしょう。
大阪市の防災対策
2015年当時、京都大学名誉教授の
河田惠昭氏が、
大阪市の防災対策について警告をしていました。
そして、タイムリーなことに本日も公演されていました。
大阪市の防災が全く進んでいない、とご立腹でした( -_-)
今日の駄文
基礎的なことだけでしたが、3回に分けて書きました。
この基礎的なことでさえ、投票する大阪市民はどれくらい知っていたのか?
そして、5年経った今でさえ知っているのかどうか?
そして、内容について
周知も
熟議もされていない住民投票をなんで今この時期にやるのか?
それは、おそらく 2015年時の反省を生かしてのことだと思います。
つまりこれ。
「真の変革は、危機状況によってのみ可能となる」(by ミルトン・フリードマン)
コロナ禍のどさくさなら、住民投票も通りやすいだろうってことです。
そんなやり方で、取り返しのつかない変革をされても、
大阪市民はたまったものではないでしょうけどね。
・・・それとも、大阪人は本気で「大阪市は要らない」と思ってるのかな?
この記事が役に立った方は、クリックしていただけると励みになります。
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
