忍者ブログ

東からの放浪者

様々なソフトウェア開発を経験してきた視点から、開発、マネジメント、経済などについて書いています。
タイトルは、あるレトロゲームからのオマージュ。

ツイッターアカウントはこちら。

プライムニュース (2018/11/08) の酷い移民議論

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

プライムニュース (2018/11/08) の酷い移民議論

積極的にテレビの情報番組を見ることは、なくなったのですが、
先日、11/8 のプライムニュースを見る機会がありました。

(配信動画)
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/day/d181108_0.html
http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/day/d181108_1.html
※TV放送より、短く編集されています。
※「帰化・在留外国人から見た新在留資格!」というタイトルだったはず。

・・・正直言うと、余りの酷さに呆れてしまいました。

具体的に誰が酷かったかは、敢えて言いませんが、
以下のゲストを迎えて、日本の移民政策について語る、という構成でした。

  • 評論家:金 美齢(日本在住60年)
  • 米カリフォルニア州弁護士:ケント・ギルバート(日本在住40年)
  • 翻訳家・独TV局プロデューサー:マライ・メントライン(日本在住10年)

移民の多い台湾、米国、ドイツに住んでいる人ではなく、
そこの移民問題から逃れて日本で暮らしてる人に、日本の移民政策を語らせるのか?
・・・という疑問が、最初に出てきますが、とりあえずそれは脇に置いておきましょう。
正しい知見を持っているのなら、問題はありません。

人手不足だから、移民受け入れは仕方ない

金美齢
「人手不足ですし。介護関係の人を受け入れてますよね?
 それは、受け入れざるを得ないんですよ。」

まず、「人手不足」という言葉が、経営者目線の言葉なんですよね。
労働者から見れば「仕事(雇用)が沢山ある」ということになります。

それを潰してしまうので、移民政策は問題があるわけです。
(・・・というか、それを潰すのが目的なんでしょ?)


それから、介護分野が人手不足というのも間違いです。


すでに前提を間違えているし、労働者目線で話していないことが分かります。

金美齢
「少子高齢化になって、人材不足で、人手が足りない。
 外から来る人を受け入れる以外に、やっていけないわけですよね。」

自称知識人に多いですが、中世で頭が止まっている例です。
何のために、機械やコンピュータが発達したと思ってるんでしょうか?


産業革命以降は、資本集約型というのが経済の基本です。
高度経済成長期の日本もそうしました。

復興で誰も入札しなかったから、人を入れる必要がある

金美齢
「東北の大震災の後、復興をするじゃないですか。問題は働く人がいない。」

ケント・ギルバート
「入札する人がいないんだから。」

金美齢
「だから、人間はいれなきゃいけないんです。」

はい、ウソ
震災直後に、復興工事への入札が少なかったのは、
政府が十分な予算を付けていなかったためです。

予算を増やしたところ(H25→H26)、受注は増えました。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=563863303714617&set=a.236228089811475&type=3

その時期に、未消化工事高が増えていることからも

建設市場における「受注高」「施工高」「未消化工事高」の水準は!?
建設統計からみた建設市場(2)
https://archi-book.com/news/detail/101

また、労務単価が引き上げられていることからも、その事実は見て取れます。
http://mtdata.jp/data_49.html#tanka

赤字確定の単年度予算で、土建業者に事業を受注しろとでも言うのでしょうか?
事実確認もせず、平気でウソを垂れ流す人が「知識人」と呼ばれてるわけですから、
呆れてものも言えません。

欧州の混乱は難民だから問題ない

視聴者
「外国人労働者受け入れは、経済界の要請でしょうけれども、
 目先の人材不足解消に囚われて、10年先の国家像まで考えてるとは思えません。
 ヨーロッパの混乱ぶりを見るにつけ、外国人労働者受け入れ拡大は拙速だと思うのですが。」

ケント・ギルバート
「今の人は勘違いしてるんですよ。
 ヨーロッパの混乱と言うのはね、ほとんど移民じゃなくて難民なんです。」

勘違いしているのはケント氏の方です。

シリアからの流入は、確かに政治難民でした。
そして、その中に偽装難民が多く混じっていたため混乱が大きくなりました。

しかし、英国のブレグジットは、経済移民が原因です。
2004~06年に東欧諸国が EU に加盟して以降、低賃金の労働者が英国に流入し、
英国人の賃金が抑制されてしまったのが一因です。

また、現在、南欧で問題になっているのは北アフリカからの移民です。

フェンスを越えれば、そこはスペイン アフリカ中から移民が殺到
https://globe.asahi.com/article/11832345

そして、欧州の移民問題は近年に始まったことではありません。
欧州では、移民の2世や3世が起こすテロも問題になっているのです。

生まれも育ちも自分の国「ホームグロウン・テロ」の脅威
https://president.jp/articles/-/20271

こういう歴史的経緯や、事実を隠して欧州の移民政策を語るのは問題です。

10年先のことは分からないから、移民を入れろ

番組内で最も酷かったのが、この辺り。

金美齢
「スピードの速いこの環境の中で、10先の国家像なんて言っていたら、何も決まらない。」

こんなレベルの低い発言をする人に、国や社会はおろか、仕事の話もしてほしくはありません。

私も、製品開発で「先のことなんて分からないから計画なんていらない」と
言い放った酷いマネージャに会ったことがありますが、あのね、、、

先のことが分からないから計画を立てるんですよ!

そもそも未来が確定しているなら、計画なんて不要なわけです。

目標を定め、計画を立てなければ、リソースの有効活用はできませんし、
組織立って動くことはできず、何も成し遂げることはできません。

また、計画とは
「実施 → 監視・コントロール → 事後評価・改善」
というプロセスを繰り返します。

つまり、明確な目標や計画がなければ、軌道修正や改善さえ出来ないのです。
(当初の計画と現実とのずれを認識できないため)

また、計画にはリスク管理が含まれるため、
大きなプロジェクトほど、無計画が致命傷をもたらすことは、
組織で仕事をしたことがある人なら、分かるはずです。

無計画を国家単位で推奨するとは・・・
政治や経済のことを語らせてはいけない人です。

マクドナルドで並ばされた私は被害者だ

ケント・ギルバート
「10年先どうでもいいから、今はね全くいないのよ、人が。
 駅前のマクドナルドでよく買うんですよ。そしたら並ぶんですよ、すごい。
 だからね、私が被害者になってんのよ!」

さすがに、開いた口が塞がりませんでした。
ここまで低レベルな意見は、さすがに聞いたことがないので。

あのさ、、、
この人のマックで並ぶ時間を短縮するために、日本の法律を変えろと?
しかも、「日本の未来のことは考えなくていい」と、堂々と発言する始末。

食券機を導入しろ。
以上、終わり。

資本集約型の発想が出てこない時点で、現代人ではありません。
こんな人が知識人として持て囃されてる時点で、本当にテレビは終わっています。

日本だけ、長期戦略がない

米国は数年に一度、「グローバル・トレンド」という今後15~20年の予測をしています。

『2030年 世界はこう変わる』(米国国家情報会議=編)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/35622

この報告書は、米国の中長期の国家戦略に影響を与えており、
米国にきちんと、中長期的な計画が存在することがわかります。(当たり前ですが)

そして、中国も長期計画は立てています。

「製造強国」を目指す「メイド・イン・チャイナ2025」計画
https://www.rieti.go.jp/users/china-tr/jp/150804sangyokigyo.html

しかも、これは当然2025年以降の覇権を目指してのステップです。
彼らは数十年単位で目標を設定しています。

国土計画についても、各国とも長期計画を策定し、更新をしています。

各国の国土政策の概要 -An Overview of Spatial Policy in Asian and European Countries
http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/international/spw/index.html

そして、日本は1998年以降、国土計画を立てていません。
そんな国が、成長するはずがありませんね。

「10年後なんてどうでもいい」なんて発言する人に、国の政策を語らせてはいけません。

日本人は平和ボケしている

金美齢
「当事者じゃなきゃ一生懸命考えないじゃないですか
 日本人は昔の人が多すぎる。平和ボケしている。
 私たちは、こうやって一所懸命討論しているけどね。」

まぁ、日本人に平和ボケが多いのは、否定できないにしても
この3名の討論も不真面目で、平和ボケです。思い上がりにも程があるでしょう。

移民に来るのは大半が中国人です。

そして、中国は未だにこんなことをしている国です。
それに対するリスクすら想像できないなんて、平和ボケも大概にしてほしいものです。

そして、中国の政策については、その被害を大きく受けている台湾に聞きましょう。

【田村秀男のお金は知っている】中国の『一帯一路』問題は台湾に聞け
https://www.sankei.com/premium/news/180602/prm1806020008-n1.html

台湾の移民問題から逃れて、日本でぬくぬくしている人に聞いても意味はありません。

多様性を認めれば、いいことがある

マライ・メントライン
「日本人にも、もっと多様性を認めてほしい。そうすれば外国人は困らない。
 日本の文化はなくならない。いいものは必ず残る。」

日本人が困るか否か?の提言じゃないんかい!というツッコミはさておき、
そもそも「グローバル化=多様性」という言われ方をしますが、これは宣伝文句に過ぎません。

「グローバル化」とは国境を低くすることであり、
制度や文化など、様々な面で各国の差異を無くしていく動きになります。

要するに、多様性を無くすというのがグローバル化なわけです。
どの国に行っても、同じ制度、同じ文化、同じ言語、等々。
国際企業にとって、これ以上、ビジネスのやりやすい環境はありません。
これが「グローバル化」の最終目標です。

この人も含め、ほとんどの人が「グローバル化」の定義を間違えているわけです。

また、当たり前のことですが、世の中「いいもの」が残るとは限りません。
維持する努力をしなければ、よい文化・伝統・風習・制度などは消えていきます。

この3名のコメンテータは、日本に来るだけで「日本の暮らし」を手に入れてしまったので、
「先人たちの長年の努力」というものを想像できないようです。

視聴者からの質問

視聴者の方が、よっぽど勉強している

視聴者
「経済が好転する中で、人手不足による賃金の上昇を抑制するために
 財界からの要望があったから、この政策をやりたいだけだと思います。
 経済成長するときは、必ず人手不足になるのです。」

まったくその通りです。視聴者の方がよく勉強していますね。
人手不足は賃金上昇圧力になります。

賃金上昇圧力と賃金下落圧力

そして、高度経済成長期の完全失業率1.5% です。(現在は 2.3% 程度)
当時の日本は、移民を入れずに乗り切りました。
(移民を入れられなかった、という事情があったのですが)


「移民を受け入れざるを得ない」という前提自体間違いなのです。
こういう事実に対し、ケント・ギルバート氏は、以下のよう不真面目な返しをしています。

ケント・ギルバート
「物理的問題として、人がいないのよ。
 さっきも言いましたけど、だから私はマクドナルドで延々に並んでる。」

事実は無視して、自分のちっちゃな経験談という「超ミクロな話」を
国全体の「マクロな話」にすり替えています。

また、人がいないというのもウソです。
東京圏だけで50万人近い人が余っている、というのが現実です。

都道府県別 完全失業率 2018年1-3月期
2018/08/13 の記事 より

現場を知っている人の方が真剣である

視聴者
「人が集まらないのは、経営者の介護に対する考え方の問題です。
 現場の介護士は、安い賃金で重労働をしているのです。
 介護に外国人労働者を受け入れるというのは、
 日本の介護士を無くすことになると思います。」

これも全くその通りです。


金美齢
「それも極端な考え方ですよね。一方的な物の考え方だと思う。いろんなケースがある。」

現場の意見はガン無視ですか。。。
どっちが一方的な考え方なんだか。

司会者
「一方で日本人の職を奪ってしまうかも、という懸念はあると思うんですが。」

ケント・ギルバート
「それはいつでもありますよ。だから移民が嫌だという人がいる。」

金美齢
「どういう仕事だって、そういう可能性あるでしょ。」

この番組内での3人の態度は一貫して、自分たちの周りの「ミクロな話」を持ち出して
移民政策という「マクロな話」を語っています。

私も、開発現場で「席の奪い合い」は長年やってきたので、一個人の話であれば
「プロの現場なんだから仕方ない」と言いますが、
それは「飢えて死ね」という意味ではありません。

国全体の話であれば答えは異なります。
プロの厳しい現場は、国という最終的な受け皿があって、初めて成り立つのです。

人が増えれば「仕事の奪い合い」「賃下げ競争」は、構造上激しくなります。
その亀裂から国内が分断し、英国のブレグジットは起きたわけです。

まとめ

総じて、3名のコメンテータは不勉強であり、
日本の移民政策を語らせるのに、適切な人物とは思えません。

また、自分たちの身近な外国人の例を出して「大丈夫」という姿勢も危険です。
そもそも、その身近な外国人たちは、現行法でも日本に来れてるじゃん・・・
というツッコミは、とりあえず脇に置いておくとして、
ちゃんと身近な移民問題の事例を見るべきです。

室伏謙一氏(23:38~)


室伏謙一氏(1:05:01~)



※YouTube の動画が削除されていたので、ニコニコ動画の方も貼っておきます。(2020-09-29)

室伏謙一氏(23:38~)

室伏謙一氏(1:05:01~)

確かに、今回のプライムニュースの移民議論は酷い!と思われた方は、バナーをクリック!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓


PR

コメント

プロフィール

HN:
なかば
性別:
男性
職業:
元ソフトウェアエンジニア
自己紹介:
東京のゲーム会社でゲームプログラマ。
家電メーカーで組み込みエンジニア。
その後、京都に移動して観光を楽しみながら
製品開発、業務改善、QA管理などを経験。
今は東京に戻って暮らしています。

詳細な自己紹介は、こちら

ブログ紹介

管理人(なかば)の個人ブログです。

もともと、以前の職場で投稿していた社内ブログの延長で書き始めました。
エンジニア仲間に向けた雑な口調はそのままにしていますが、その辺は気にせず読んでもらえると嬉しいです(*'-')

諸事情により更新を停止していますが、生きています。そのうち再開する予定です。

カレンダー

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30