今日は、私が SlideShare にアップロードしたスライドに関する話です。
昨今、生産性が取り上げられるようになりました。
よいことだと思います。
しかし、ほとんどの人は生産性のことを誤解して捉えてるのでは?
というのが、私が常々感じてることでした。そのために書いたスライドです。
スライド自体は、スライドのみで分かるように書いたつもりなので、
・・・是非、読んでいただきたいです(^^;
今日は、スライドの元になった
「生産性に対する誤解」について書きたいと思います。
生産性に関する危険な3つの誤解
先日の『
経済記事の虚実を読み解く』でも書いたのですが、
人は、単純で明確なものを見せられると「それが全て」になってしまいがちです。
それが、スライド 2 ページ目の式です。
複雑なことを考えるとき、まず単純化して考えてみる、というのは私もよくやります。
大事なのは
「その裏には複雑な現実があり、この式はその一端である」ということを
忘れないことです。
問題なのは、
経済学という学問自体が、これをやってしまいがち!
というところです。
なので、ほとんどの教科書、書籍、専門家の記事などが、
「この式で世の中の生産性が成り立っている」という前提で書かれてしまっています。
すると、生産性を上げるための方法を見失ってしまいます。
そうすると、
- 投資を減らし、将来の生産性を下げてしまう
- 利益率の高い事業に転換してしまい、今までの投資の蓄積を放棄してしまう
という二択に陥ってしまいます。
※第3の解は、冒頭のスライドをご覧ください。
2.生産性とはお金の話ではない
もう一つは、スライド内では大きく取り上げなかったのですが、
世間で一番誤解されている部分ではないかと思います。
(スライド内でも 9 ページ目で、少し言及してるのみなんですが・・・)
生産性とは、お金(利益)の話ではなく、
必要なモノ・サービスを生産(供給)する能力
のことです。
お金(利益)を基準に考えてみる
例1)
政府が「日銀に通貨を発行させて、日本の生産品すべてに 100% の補助金を出す」
という政策を打ち出したとします。
明日からすべての物価が 2 倍。収入も 2 倍。
お!俺たち生産性が 2 倍になったのか?(^^)
なってません!
例2)
確実に年収 1000 万円稼げる投機商品があります。
日本人は明日から全員、この投機で暮らしていきましょう。
災害が起きても、道路や建物は修復できないし、誰も医療サービスを提供してくれないけど
労働生産性は夢の 1000 万円突破。
俺たちの生産性は爆上げだな。(^^)
生産性は下がってます!
一般的に生産性が「お金(利益)」を基準に考えられているのは、
単に
統計を取るのが楽だからです。
生産性は、利益を生み出す源泉になりますが、
利益そのものではないのです。
3.短期的には生産性を下げる必要もある
スライドの中では、
生産性を上げるためには投資が必要、ということを強調しています。
特に
「人材投資」「技術投資」は、中長期の視点が必要です。
そして、「投資 → 将来の生産性向上」は、大抵
Jカーブを描きます。
短期的に生産性を上げることだけを考えていると、
将来の生産性を下げてしまいかねません。
投資と生産にかかわるコストは分けるべきでは?(*'-')
確かに、それができると便利ですし、計算もきれいになります。
だから、
経済学では、それをやりがちです。
開発の部署と技術研究の部署が分かれている場合もありますが、
それでも、開発部署でさえ、新しいツール・手法の導入は行います。
また、「開発を経験する」それ自体が人材投資にもなるので、分けることは難しいのです。
開発におていは、
生産にかかわるコストの中には投資も含まれている、
と考えた方がよいと思います。
今日のまとめ
- 単純化された計算式を盲信してはいけない。
(開発現場での生産性向上のプロセスは、もっと複雑。)
- 生産性とはお金の話ではない。供給能力の話。
- 生産性向上は、中長期の視点での投資が必要になるので、
生産性は、短期的な視点では下がることもある。
生産性はお金の話ではないですが、供給能力は定量的に測るのが困難です。
指標がないとコントロールすることは難しいので、利益などを見るのは大事なことです。
ただし、その数字に囚われてはいけません。
また、利益率の高い事業や、投機による資金調達を否定しているわけでもありません。
投資をするにも、事業を継続するにも資金は必要です。
ただし、分けて考えておかないと、長期的に生産性を落としてしまう危険があります。
そして、
一度なくした生産性を取り戻すには時間がかかります。
確かに、生産性に対する誤解には注意が必要だ!と思われた方は、バナーをクリック。
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