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東からの放浪者

様々なソフトウェア開発を経験してきた視点から、開発、マネジメント、経済などについて書いています。
タイトルは、あるレトロゲームからのオマージュ。

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労働分配率と西日本豪雨災害

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労働分配率と西日本豪雨災害

以下は、平成30年度 中小企業診断士 第1次試験「経済学・経済政策」
1問目に出題されたグラフです。

労働分配率と営業利益の推移(2000年=100)

cが営業利益、dが労働分配率(労働者へ分配された割合)なんですが、
こんなのを単発で答えるのは簡単な話。

本当は、様々な情報と、世の中の様々な事象を結び付けて考えられないと、
真に「経済が分かった」とは言えません。

例えば、「上記のグラフと今年の西日本豪雨災害の関係を述べなさい」と問われたら
どんな答えを書けばいいでしょうか?

株主資本主義と労働分配率

前述のグラフでは、営業利益と労働分配率が、ほぼ真反対になっています。
営業利益が増えたときに、労働分配率が下がっているということは、
営業利益がほとんど労働者へ分配されていないことを表しています。

では、企業の儲けはどこへ向かったのか?

設備投資・・・?

新規事業や生産性向上のために、設備投資に使った可能性があります。
これだと、まだ健全なんですが・・・。

日本の製造業・サービス業の資本装備率(万円/人)
日本の製造業・サービス業の資本装備率(万円/人)


う~ん、設備投資はあまり行われていないようですね。。。

内部留保・・・?

確かに、近年は企業が内部留保(要するに貯蓄)を溜め込んでいることが問題視されています。

内部留保、過去最高の446兆円 経常利益・設備投資も
https://www.sankei.com/economy/news/180903/ecn1809030006-n1.html

企業の内部留保(利益剰余金)の推移

しかし、内部留保が大きく伸び始めたのは 2013年(平成25年)以降です。
安倍政権による金融緩和が始まったときからですね。

配当金でした

一番、影響が大きいのはこれですね。
株主への配当金です。

日本の売上十億円以上の企業の配当金(百万円)
新世紀のビッグブラザーへ:日本の売上十億円以上の企業の配当金(百万円)


2000年以降、株主資本主義が大勢を占めるようになって、
企業が儲かっても、労働者へ分配されなくなってしまったわけです。

短期決算と株主資本主義

企業を成長させるためには投資が必要です。
しかし、投資には以下の3つの性質があります。

  • 長期である(特に技術投資・人材投資は)
  • 未来は不確定である(投資のいくつかは成果が出ないかもしれない)
  • 一時的に支出が増える(投資の効果はJカーブを描く)

しかし、株主の力が強くなると、以下の要求が強くなります。

  • 短期の成果(四半期決算の要求)
  • 確実な利益(長期的な投資の敬遠)

短期的に、確実に黒字を増やす方法・・・。
コストカットしかないですね。特に人件費

日本の実質賃金指数の推移
日本の実質賃金指数の推移

若者の婚姻率の低下と人材不足

人件費カットを続けていると、国民が貧困化し、婚姻率が低下していきます。

生涯未婚率の推移(1985-2015年)
2018/06/04 の記事 より


そして、そんなことを 20年以上も続けていたので、少子化が深刻になり、
日本はついに人手不足になりました。人手不足になると、賃金上昇圧力が生じます。

賃金上昇圧力と賃金下落圧力


しかし、こうなると困る人たちが出てきます。経営者や株主などの資本家たちですね。
「賃金カットが出来なくなるじゃないか!」というわけです。

移民受け入れ拡大へ

資本家「せや!人を増やせばいいんや!」

というわけで、近年は移民が増大しているわけです。
経済界からの要請なんですね。

日本の外国人雇用者数(人)
日本の外国人雇用者数(人)

東京一極集中と地方衰退

そして、労働者を増やして賃金切り下げ競争をさせたいわけですから、
人口は、都市部(主に東京圏)に集中した方が都合がよいわけです。

しかし、逆に考えれば、地方は競争相手が少なくビジネスチャンスになります。
そして、そこにインフラ整備がプラスされると、景気は一気に拡大します。

代表例がここですね。

北陸景気「拡大している」、日銀判断据え置き
https://www.sankei.com/west/news/180709/wst1807090056-n1.html

北陸新幹線の経済効果は、当初見込みでは 125億円でしたが、
実際には、
678億円
ありました。

インフラが整備されたところには、人・物・企業・設備が集まります。
しかも、もともと競争相手が少ないわけですから、景気がよくなるのは当たり前ですね。

しかし!
地方にインフラ整備され、人口が分散すると困る人たちがいます。

経営者や株主などの資本家たちですね。
「賃金カットが出来なくなるじゃないか!」というわけです(再)

西日本豪雨災害

というわけで、経済界がスポンサーについている大手マスコミは、
こぞって公共投資(=インフラ整備)には反対という論調なわけです。

※マスコミが公共投資に反対する理由は、実は他にもあるんですが、
 本日のテーマではないので、また今度。

そして、政治家のほとんどは根性がないので、
マスコミバッシングを恐れて、公共投資を削っていきました。

日本の公的固定資本形成と対GDP比率
日本の公的固定資本形成と対GDP比率


そして、そんなことを20年以上続けてきた挙句、
インフラが不完全&老朽化の状態で起きたのが、西日本豪雨災害なわけです。

ようするに人災だったということです。

答え

労働分配率の低下と西日本豪雨災害は、
株主資本主義という同じ根っこで繋がっていた。

今日のまとめ

  • 株主本主義の台頭により、労働分配率が下がる。
  • 労働分配率を低く維持するために、移民受け入れ拡大を行う。
  • 労働分配率を低く維持するために、東京一極集中を行う。
  • ゆえに、地方のインフラ整備が不要とされる。

今、地方のインフラ整備をすれば、復興需要が生まれ、雇用が生まれ、
長期的には、人口が分散され、低賃金争いも無くなって、デフレ脱却できるんだけどなぁ。

けど、西日本豪雨災害の翌週には、
マスコミは図ったように、こんな社説を書くわけです。

(社説)来年度予算 歳出膨張抑えられるか
https://www.asahi.com/articles/DA3S13581322.html

災害があったんだから、予算は増やせよ(*'-')

しかし、マスコミを情報源にしている人は、
「やっぱ予算は抑えないとな、地方は諦めるか・・・」となってしまいます。

新聞やテレビのニュースには、インパクトのある言葉と断片的な情報しかないので、
見ているとバカになっていくだけです。

こんな2人みたいに。

地方でインフラの老朽化が深刻に 堀江貴文氏が指摘「政局より重要」
http://news.livedoor.com/article/detail/13812341/

今の日本は、一定の人口密度を満たさない地域は切り捨てて、都市部にいろいろな機能を集中していかなければならない状況ですから。地方のほとんど使われない公共インフラの整備に多くのお金を使ってたら、都心部まで共倒れしますよ。

地方はインフラ劣化で衰退、その影響で東京は人口増加で衰退(参照)。
地方のインフラを整備しないと共倒れするんですよ(*'-')
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コメント

プロフィール

HN:
なかば
性別:
男性
職業:
元ソフトウェアエンジニア
自己紹介:
東京のゲーム会社でゲームプログラマ。
家電メーカーで組み込みエンジニア。
その後、京都に移動して観光を楽しみながら
製品開発、業務改善、QA管理などを経験。
今は東京に戻って暮らしています。

詳細な自己紹介は、こちら

ブログ紹介

管理人(なかば)の個人ブログです。

もともと、以前の職場で投稿していた社内ブログの延長で書き始めました。
エンジニア仲間に向けた雑な口調はそのままにしていますが、その辺は気にせず読んでもらえると嬉しいです(*'-')

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