タイトルでいきなり結論を書いてしまいましたが、今回は
出生率についてです。
10 年くらい前から、よくこんな記事を見かけるようになりました。
「少子化で人手不足だから、少子化問題を解消するためにも移民受け入れは止む無し」
といった論調です。
いや~、
薄っぺらい情報だ。
マスコミを情報源にしている人たちは、物事を正しく理解する力を無くしていくわけです。
出生率について
まず、
少子化問題を考えるには、最低でも3つの数値を知らなくてはいけません。
(期間)合計特殊出生率
一般的に出生率と言った場合は、
(期間)合計特殊出生率を指します。
「15-49 歳の各年代の女性がその年に生んだ子供の数」を「その年代の女性の総数」で割り、
それを合計したものです。
「一人の女性が一生のうちに産む子供の数の平均」として使われる数値です。
(完全にイコールではないのですが、この数値が代用されています。)
2015 年時点での日本の合計特殊出生率は 1.45 です。
人口の維持には 2.07 必要であると言われているので、日本は間違いなく少子化です。
ただし、この数値だけ見て「だから日本は衰退する・・・」と言うのは間違い。
(大手メディアは、そう言うのでしょうけど。)
有配偶率と有配偶出生率
そして、合計特殊出生率に大きな影響を与える数値が2つあります。
有配偶率
総人口における結婚している人の割合です。
ちなみに、「100% = 未婚率+有配偶率+離別率+死別率」となります。
有配偶出生率
「結婚している女性が、その年に産んだ子供の数」を「結婚している女性の総数」で割り、
1000をかけたものです。
平たく言うと、
「結婚している女性 1000 人当たりの出生数」です。
日本は特に嫡出子(正妻の子供)の割合が多いので、この2つの数値は重要です。
けれど、テレビや新聞では、ほとんど目にしません。
近年の推移
グラフにしてみました。
※有配偶出生率:人口統計資料集(2018) 表4-12 より
※有配偶率:人口統計資料集(2018) 表6-21 より女性の数値を使用
※合計特殊出生率:人口動態調査(2015) 上巻4-5 より
実は、有配偶出生率は、90 年代前半にすでに底を打っており、
20 年以上前から上昇傾向にあります。
つまり、結婚している女性は子供を産んでいるのです。
結婚できない人たちが増えているのが、少子化の最大の原因なわけです。
未婚率と実質賃金
「結婚できる・できない」に大きな影響を与えているのは、以下の2つです。
1つめは
実質賃金、ようは
年収の差です。
2つめは、
雇用の安定、ようは
正規・非正規雇用の差です。
非正規社員は、基本的に正規社員より年収は低くなるので、
結局は、
経済的理由が一番大きな影響を与えるとも言えます。
近年の推移
以下は、1997 年を基準としたときの
実質賃金の推移です。
日本の実質賃金指数の推移
下がり続けてますね。。。
そして、次は
生涯未婚率(50 歳時の未婚率)の推移です。
※人口統計資料集(2010) 表6-23、人口統計資料集(2018) 表6-23 より
当たり前のように上昇しています。
少子化になるわけです。
消費増税と実質賃金
実質賃金の推移のグラフを見ると、3 回大きく落ち込んでいるのが分かります。
2008 年はリーマンショックです。そして、1997 年と 2014 年は
消費増税です。
つまり、消費増税は、少子化にも大きな影響を与えているわけです。
少子化対策をしているはずの政府が、
そんな消費増税を、来年もう一度行おうとしているだから、さすがに背筋が寒くなります。
人口推移予測と出生率
最後に、少し小ネタの紹介。
よく、今後の人口推移予測をもとに政策議論などがされているのですが、
まず、今の出生率が今後も続く前提で議論することに問題がある気がします。
なんか、出生率が回復しない前提で議論されてることが多い気がするんですよね。。。
経済政策の失敗によって、デフレになり、実質賃金が低下を続けた結果、
今の出生率になっているわけで、これを回復させていかないといけません。
福岡県宮若市
合計特殊出生率というのは意外と変動の激しい値です。
地方自治体での例になりますが、こんな話があります。
麻生太郎氏×堀義人氏 「“とてつもない日本”を、九州から」
https://globis.jp/article/2538
麻生:仕事が安定しないと結婚しない。結婚しないと子供を産まない。一番分かり易い例は宮若市(旧宮田町域)にあるトヨタ自動車九州(以下、トヨタ)の例だ。政調会長をやる前の話だったと思うが、「社員を正規で雇って欲しい」という旧宮田町の要望を受け、トヨタは利益が出はじめたのに合わせて社員を正規で雇った。それで宮若市では結婚式がすごく増えたというから、市長を呼んで、「保育園の陳情でもしたほうがよかないか?今、出生率は日本一じゃないか?」と言った。事実、日本一になったんだけれども。やはり正規できちんと雇われるという話にならないと、なかなか職も安定しない。
宮若市の合計特殊出生率がどれくらい変動したかというと、
3 年間で 1.09 から 1.65 になりました。
つまり、根本的な少子化対策は
「国民を正社員として雇う」でよいのです。
そして、今は人手不足なので、
企業側には
「国民を正社員として雇わなければいけない」圧力がかかっています。
今、移民を受け入れてしまうと、
せっかくの少子化問題解消のチャンスが潰れてしまうわけです。
今日のまとめ
- 合計特殊出生率を見るときは、有配偶率と有配偶出生率に注目する
- 有配偶出生率は、ここ 20 年は上昇傾向にある
- 有配偶率は、実質賃金と雇用の安定に大きな影響を受ける
- 人手不足は、少子化問題解消のチャンスになる
最後に、さらなるおまけ。
前回の記事で、「東京は失業率も高く、47都道府県の中で最も出生率が低い」
ということを書きました。
※ここで「外から人が流入すると少子化問題は悪化するのでは?」という閃きが欲しいところ!
東京の出生率を下げているのは、
有配偶率なのか、
有配偶出生率なのかを調べてみました。
答えとしては
「どっちも悪い」でした( -_-)
※内閣官房・内閣府 総合サイト『地域少子化・働き方指標(第3版)』 より
本当は、有配偶率を使いたかったのですが、未婚率のデータしかなかったので、
「出生率を押し下げる要因」としてグラフを作ってみました。
どちらの数値も悪いですが、特に未婚率の影響が大きいですね。
男性・女性とも、東京都は未婚率が 1 位(=既婚率が 47 位)でした。
東京は労働者が多すぎて、少子化になっているのです( -_-)
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