以前勤めていた会社で、現場からの
「人手が足りない」という声に対して、
当時の社長が、こう言ったことがありました。
人手不足って本当だろうか?
工夫できる余地はないか、考えてみてください。
前半の疑問はいいのですが、
後半の答えで、私はズッコケました。_(:3」z)_
この社長は、内外では「やり手」として知られていたのですが、
優秀な経営者でも、経済を分かっているとは限らないわけです。
資本主義と投資
以前「
労働集約型と資本集約型のマネジメント」という記事で、
「資本主義とは何ぞや?」ということに少し触れました。
人手不足を
「人手」で埋めていたのが中世以前の世界。
産業革命以降は
「投資」によって埋めるのが基本になりました。
人手不足を「人手」で埋めた場合
生産量は増えるかもしれませんが、生産性は上がりません。
ソフトウェア開発などの業務の場合、人手が多くなると
規模の不経済が働き、
かえって生産性が下がってしまうことさえあります。
人手不足は「投資」で埋める
資本主義の世界では、人手不足は
「投資」で埋めるのが基本です。
具体的には、以下への投資です。
- 機械や建物などの設備
- 道路、水道、電力などのインフラ
- 新技術
投資とは単にお金を使うことではなく、
生産活動に資本を投じることを指します。
そして、投じる資本には
固定資本(設備・インフラ)も含まれます。
日本は「人手不足」ではなく「設備不足」
企業が「人手不足」を感じたとき、まずやらなければいけないのは
設備投資です。
技術投資は、不確実性も高く、かつ時間もかかります。
また
インフラ投資(公共投資)は、国や自治体がやることです。
つまり、企業の生産性向上の基本は
設備投資なわけです。
しかし、現状はどうか・・・?
企業の
設備年齢は、バブル崩壊前と比べて、
中小企業で
2倍、大企業でも
1.5倍になってしまっています。
設備年齢が高いというのは、古い設備で頑張っているということです。
つまり、人手不足を「人手」で埋めてしまっているわけですね。
人手不足を「人手」で埋めた場合の帰結 その1
まず、不景気のときに人手を増やそうとした場合、企業は「非正規雇用」を増やします。
そして、人手が増えるということは、
低賃金競争が発生します。
非正規雇用となれば状況はより厳しく、少子化の原因になっています。
人手不足を「人手」で埋めた場合の帰結 その2
私の働いていたソフトウェア業界では、そう簡単に人は増やせません。
希望する技術を持った人が、そう簡単には見つからないからです。
つまり、現状の人手で「足りない人手」を埋める必要があります。
長時間労働ですね。
人手不足を「人手」で埋めた場合の帰結 その3
「その1」と「その2」の合わせ技になるのですが、
最終的には、これが削られてしまいます。
日本の失われた20年というのは、
日本企業が
「賃金」「健康」「品質」を削っていた20年というわけです。
今日のまとめ
- 資本主義では、資本を投じること(=投資)によって人手不足を解消するのが基本。
- 近年の日本企業は、設備投資を怠っているため生産性が低下している。
- 企業が設備投資を怠ると「賃金」「健康」「品質」が損なわれる。
人手不足を安易に「人手」で埋めてはいけません。
企業においては、
「設備不足」と言い換えてみるとよいでしょう。
そうすれば、やるべきことが「現場への工夫とやらの強要」でないことが分かります。
マネージャがまずやるべき仕事は、投資計画を立て、その予算を確保することなのです。
現場に「工夫」とやらを強いるなら、その前に
投資計画と
予算確保に知恵を絞るべきです。
計画立案もできない、予算も確保できないマネージャは不要といってもよいでしょう。
そして、現場から声をあげるときは「人手が足りない」ではなく、
「投資が足りない」と言ってみましょう。
確かに、「工夫しよう!」は投資を実行できないマネージャの言い訳だ!
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