機会コスト
まず、言葉の定義。
平たく、汎用的な説明にすると、こんな感じの意味になります。
機会コストとは、
意思決定の選択肢の中で「選択しなかった案」をもし選択していた場合に、
得られるはずだった価値のこと。
本来得られたであろう価値を
「得られなかった = 損失(費用)」と考えるわけです。
機会コストを想像できないマネージャ
開発部署の場合には、実際に何かを売って直接利益を出しているわけではないので、
厳密に計算するのは難しいですが、例えば
- 生産性が上がって、開発に余裕が生まれる(時間 × 賃金 × 人数)
- 製品の品質が上がり、不具合が減る(単位期間の欠陥報告数 × 平均修正時間)
のように概算してもよいと思います。
まぁ、計算はせずとも
「何もしない = 将来何も得られない」
という当たり前のことを踏まえて意思決定をすればよいわけです。
けれど、
目の前の支出にしか目が行かず、
何もしないことを「善」とするマネージャは意外と多いです・・・( -_-)
投資不足は取り返しが付かない
むかし働いていた職場で、やたらと
設備投資を渋るマネージャに会ったことがあります。
やれ費用がかかるだの、やれ減価償却が残ってるから勿体ないだの、
終いには
「自席で頭を使って考える人に育ってほしい」とか言い出して呆れてしまいました。
結局どうなったか?
担当していた
プロジェクトが遅延しただけでした。。。
そして、開発者たちは(特に若い開発者は)時間的余裕を奪われ、成長の機会を削られました。
支出をゼロにした代わりに、色々な
損失(費用)を負うことになったのです。
しかし、無くした時間は戻ってきません。
まさに『
投資不足は取り返しが付かない』のです。
けれど
「機会コスト」を想像できないマネージャは、
自分のしでかしたことに気付くことはありません。
埋没コスト
こちらも、言葉の定義から。
埋没コストとは、
すでに決定している、もしくはすでに発生しているコスト。
どの選択肢を選んでも回収できないため、意思決定には影響しない。
大事なのは
「意思決定には影響しない」という部分です。
埋没コストを想像できないマネージャ
以前、働いていた職場で、現場からこんな声が上がったことがあります。
このツールを独自開発するのを止めて、外製のものを買いましょう。
私も、そのツールを開発することで、何か特別なノウハウが溜まる気もしなかったので、
「外製のものを買う」案に賛成でした。
しかし、担当マネージャはこう返事をしました。
マネージャ「いや・・・せっかく、ここまで作ったんだし。」
がっつり意思決定に影響を与えてしまっています。
埋没コストを判断材料に入れてはいけないんですよ!( -_-)
そして、余計なことに工数を割かれた開発現場は、
「他の選択肢を選ぶ」ための時間を失い、
機会コストを負うハメになりました。チャンチャン
今日のまとめ
- 目の前の支出だけでなく、将来得られるはずだった価値(機会コスト)にも目を向ける。
- 埋没コストを意思決定に影響させてはいけない。
- 埋没コストの影響を受けると、機会コストを負い、投資の機会を失うこともある。
開発現場の場合、大事なのは「お金」よりも「時間」だったりします。
たいていの開発プロジェクトでは、資金より時間の方が足りない。プロジェクトがある程度まで進んだところで、時間が足りないことに気づく。そのとき、プロジェクトマネジャーや経営陣は、多少のカネをばらまいてでも時間が買えたらと思うはずだ。しかし、プロジェクトがそこまで進んだ段階で、時間を買える可能性は低い。(トム・デマルコ)


『
アドレナリンジャンキー ~プロジェクトの現在と未来を映す86パターン~
』 P.42 より
けれど、時間にも「機会コスト」「埋没コスト」の考え方は適用できます。
「機会コスト」「埋没コスト」の知識がないばかりに、
時間を無駄に使い、組織や開発者の将来を失わないように・・・。
確かに、目の前の支出だけに注目して意思決定をしてはいけない!
と思われた方は、バナーをクリック!
↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓
